オーストラリアのラジオ局がAI DJを実験、反響を呼ぶ

リスニングの中で若い女性DJの声が響くが、彼女は実在しない可能性が高い。オーストラリアのシドニーにあるCADAラジオ局が、リスナーに公表せずにAIで生成された仮想アジア系女性DJ「Thy」を6ヶ月間使用していたことが発覚し、大きな議論を呼んでいる。オーストラリアの「The Australian Financial Review」と「The Sydney Morning Herald」からの報道によると、CADAの昼間のパーソナリティ「Thy」の身分には不明瞭な点が多い。Thyは公開されている個人情報がなく、SNSアカウントや経歴紹介もないことが判明した。調査の結果、Thyのイメージは実際の財務部門の従業員に基づいているが、声や番組の内容はすべてAI音声生成プラットフォームElevenLabsによって作成された。
メディア関係者は、新人でも通常はSNSアカウントを運営して影響力を築くが、「Thy」は全くソーシャルメディアの足跡がない。唯一公開されている画像はCADAと母体のARN Mediaのウェブサイトにしか現れない。記者たちがThyの番組を聴き始めた際、彼女がほとんど「発言していない」ことに気がついた。番組内では機械的な音声クリップが流れ、次の曲を予告するだけで、トーンが一貫していて感情が乏しく、リアルな放送と大きく異なる。
Thyの身元が暴かれた後、世間は怒りを覚えたのは、単なるAI技術の利用ではなく、この仮想DJがARNの少数派アジア系の「多様性」の象徴とされていたためである。オーストラリアの声優協会の副会長Teresa LimはLinkedInで厳しく批判し、「長年努力している真のアジア系女性のメディア代表としての声を奪うことは虚偽であり、搾取である」と述べた。また、AIの仮想キャラクターの台頭は、必ずしも真の多様性と包摂を促進しているわけではなく、むしろ表面的な施策であり、アジア系女性がメディアでの発言権が高くなったと誤解させる可能性があると指摘されている。
さらに「Thy」という名前は「AI」との発音が近いことから、その意味に疑念を持つ人も多く、これがさらなる不快感を引き起こす要因となっている。CADAが使用するAI音声サービスのElevenLabsでは、各パーソナリティの原稿が人工的に作成され、音声ファイルへ変換された上で放送システムZettaに入力される。この流れは非常に時間がかかり、人間による原稿執筆を必要とし、自動化は完全ではない。
初任給のラジオDJを雇うコストは約3万5千豪ドル(約740万円)であるのに対し、AI音声サービスの商業利用権料も同等である可能性がある。財務的な観点から見ても、この秘密のAI実験は実質的なコスト削減には至らず、さらにはブランド信頼の損失によって相殺される恐れがある。ラジオ番組のコアバリューは音楽を流すことにとどまらず、感情的なつながりや即時の対話を確立することにある。これは冷たく無機的なAIには代替できない。
最も懸念すべきはThy事件が、単なるラジオ局の過ちにとどまらず、AIコンテンツがニュース、ラジオ、映画メディアに浸透していることを示唆する大きなトレンドの危機である。市民が断然理解できる説明や告知がない場合、彼らは真実と虚構を見分けることができなくなり、信頼の基盤が崩壊することになる。ラジオ局、ニュースメディア、映像プログラムといった、かつて真実性と権威を求められてきた分野が、今や信頼性の課題に直面している。
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