シンガポールの静かな海浜公園（Esplanade Park）に立つラッセル・ヘン（Russel Heng）は、自身が警察に逮捕された場所を指さして言った。理由は彼がゲイだからだ。そこはどの緑豊かな場所と変わらないように見えるが、1980年代、インターネットやグラインダーの前、同性を犯罪視するこの国で、ここはゲイたちの集まる場所だった。劇作家で活動家のヘンは、そこが「五本の木の足元」（the Feet of Five Trees）と呼ばれ、高い熱帯の木々が隠れ場所を提供していることを思い出す。

その夜、彼らは公園内を歩いていたが、突然、私服警官が彼らに大声で怒鳴った。彼らは列に並ばされ、「自分たちに恥じるべきだ」と厳しく叱責された。ヘンは、当時純粋に公園を散歩していただけだったが、これは心理的に彼らに何か間違ったことをしているかのように感じさせたと述べ、これが実質的にはいじめの一形態であると言った。実際、数十年にわたり、シンガポールはイギリス植民地時代からの論争のある法条377Aを引きずっていた。この法律は2人の男性の間の性行為を禁止していた。当局は、この法律がシンガポールの公衆の同性愛に対する受け入れの欠如を反映していると主張していた。しかし、先週、議会はこの法律を廃止し、シンガポールはこの国がかつて持っていた暗い歴史に別れを告げた。

当時、男性の同性愛者は強い社会的汚名に直面していただけでなく、当局からもターゲットにされていた。あの夜、公園で、ヘンさんと他の男性は警告だけで釈放された。しかし、他の人々はもっと幸運ではなかった。シンガポールの警察は、長年にわたりゲイのナイトクラブやビーチ、公園に対していわゆる「反同性愛襲撃」を行ってきた。これには、偽のゲイ警官がそうした場所に出没し、彼らと「接触」した人々を迅速に逮捕するという論争のある「おとり捜査」が含まれていた。逮捕された人々は、売春や公然わいせつ、または不適切な行動で起訴されることが多かった。シンガポールの大手新聞は、逮捕された人々の名前、年齢、職業などの詳細を公表しており、大半の人々は罰金や数か月の懲役が科せられていた。しかし、1993年に行われた特別な逮捕では、「フォート・ロード襲撃」と呼ばれる執行行為で数名の男性が捕まり、シンガポールの悪名高い過酷な罰を受けた：鞭打ち（caning）。その後、関連する告発は上訴時に裁判所によって覆され、審議を行った裁判官は、これらの男性が逮捕され告発される方法は「不快」であると指摘した。

しかし、シンガポールの多くの男性愛者にとって、これらの襲撃は彼らの存在が許されないという明確なメッセージを送っていた。シンガポールの厳格な管理の下では、反同性愛の暴力はあまり一般的ではないが、コミュニティ内の多くの人々は親しい友人や社会全体にオープンに出て行くことを恐れている。「常にこっそりしなければならず、常に誰かに見られるのが怖い」と71歳のヘンさんはBBCに語った。「それが私たちがゲイとして生きた時代の一部です。」シンガポールが同性の性行為禁止令を廃止したことで、アジア太平洋地域の「ゲイ」権利の現状が見直されている。